作品と暮らし

作品を通して、おしゃれやライフデザインのクオリティを高めること。
そして毎日の生活を楽しみ、幸せのドットを増やしていくこと。

これは、comb de shioを始めた頃から、私が大切にしてきた思いです。

作品をつくることも、身につけることも、

日々の暮らしを楽しむことも、

私の中ではどこかでつながっています。

 

ガラスとの出会い

ガラスに出会う前、私は草木染に取り組んでいました。

草木染の柔らかな色には魅力がありました。

でも、自分が表現したいものの中には、

それだけでは表しきれないものがありました。

そんなときに出会ったのがガラスでした。

ガラスなら、形も色ももっとシャープに表現できる。

私はもともと丸みのあるものより、

四角や直線のある形に惹かれていました。

それもガラスに向かっていった理由の一つだった

ように思います。

そして、自分でつくったガラスを窯から取り出したとき、

「なんて綺麗なんだろう」

と思いました。

表面的な華やかさとは少し違う、ガラスそのものが持っている美しさでした。

そこから、私はどんどんガラスに引き込まれていきました。

 

simple & dignity ― シンプルと品

「simple & dignity」という言葉を先に決めて、それをコンセプトに作品をつくり始めたわけではありません。

制作を始めたごく初期、アトリエユニオンで壁面

作品を発表していました。

その頃には、すでに自分の作品に「シンプルさ」と「品」

があると感じていました。

comb de shioという名前のもとになった作品にも、同じものを感じていました。

それをどう表せばいいのか考え、「品」を表す英語について外国の方にも尋ねました。

eleganceという言葉もありましたが、私にはどうしても dignity の方がしっくりきました。

そうして、

simple & dignity ― シンプルと品

という言葉になりました。

作品を言葉に合わせたのではありません。

最初から自分の中にあったもの、自然につくって

いたものを、後から言葉にしたのだと思います。

振り返れば、子どもの頃に育った環境も関係しているのかもしれません。

実家の座敷には「質素」と書かれた額が掛かっていました。

質素というのは、貧しいことでも、ただ何も持たないことでもありません。

余分なものを求めず、それでも豊かであること。

その感覚は、知らないうちに私の中に残っていたのかもしれません。

 

一枚の絵を、胸元に

私にとって、壁面作品とアクセサリーの間には、あまり大きな違いがありません。

制作を始めた初期から、壁面作品とともにガラスのチョーカーやブローチもつくっていました。

2001年、グラスクラフトトリエンナーレへの入選をきっかけに、アトリエユニオンで作品を発表する機会へとつながりました。

当時のチョーカーやブローチは、どちらかといえば工芸的な表現でした。

壁面作品にも、小さなガラスを何枚か組み合わせ、一つのパネルとして構成したものがありました。

その後、色を入れたり、線を加えたり、

さまざまな表現を試しました。

そして一枚のガラスを

「一枚の絵」のように表現するようになって

いきました。

それがチョーカーから先に生まれたのか、壁面作品からだったのか、今でははっきりとは覚えていません。

壁面作品を見て、

「これを小さくして胸元につけたい」と思うことがあります。

反対に、小さなガラスを見て、「これを大きく

したら壁面作品になる」と思うこともあります。

作品とアクセサリーは、私の中でいつも行ったり来たりしています。

大きさが違うだけで、どちらも一枚の絵。

壁に掛けた作品は、その場所を訪れた人が見るものです。

でも、それが女性の胸元にあれば、その人と一緒に街を歩き、行き交う人にも見てもらうことができます。

「胸元に一枚の絵を」

そんな思いで、私はチョーカーをつくってきました。

今では、お客様がcomb de shioを身につけて、

さまざまな場所へ旅をしてくださいます。

外国へ連れて行っていただくこともあります。

私自身がそこへ行けなくても、私のつくった小さな作品が、その人と一緒に旅をしている。

そう思うと、それも嬉しいことです。

 

仕事として続けてきたこと

comb de shioを仕事として続けていく中で、迷うこともありました。

百貨店のアクセサリー売り場へ行き、繊細なチェーンや金細工のアクセサリーを見たり、売り場のレイアウトを見たりしました。

「自分のアクセサリーも、こういうものにならないだろうか」と考えたこともあります。

きっと、こういうものが多くの人に好まれるのだろう。そんな目で見ていたのだと思います。

でも、どうしても私は、そういうアクセサリーをつくることができませんでした。

つくる技術がなかったということもありますが、それ以上に、自分がそういうものをつくりたいとは思わなかったのだと思います。

繊細な金具や装飾のあるチェーンより、私が選んだのは何の飾りもないシンプルなもの。

ガラスが主役で、金具やチェーンはそれを支えるだけでいい。

それが私のガラスには合っていました。

ガラスのまわりをシルバーなどで囲い、額縁のようにしたらどうか、と言われたことも何度もあります。

でも、ガラスの側面を金属で隠してしまうと、

透明なガラスに光が入りません。

私の作品は、透明なガラスに色を入れ、そこに

表現を重ねてつくっています。

透明なガラスであることは、私の作品の根幹に

あるものです。

だから、その側面を覆ってしまうことは、私には

できませんでした。

壁面作品でも同じでした。

白いパネルにガラスをそのまま取り付けた作品を見て、「額に入れたら」と言われることがよくありました。

木枠をつけた時期もありましたが、本当は、パネルとガラスだけで十分だと思っていました。

ニューヨークの美術館を巡ったとき、額に入れず、パネルのまま見せている作品をたくさん目にしました。

「ああ、これでよかったんだ」

そんなふうに思ったことを覚えています。

売れるものをつくりたいという気持ちは、もちろんありました。

それでも、自分が違うと思う方向へは、どうしても行けませんでした。

同じようなガラスのアクセサリーも、ほとんど見たことがありませんでした。トンボ玉はありましたが、私がつくっているものとはまったく違います。

「これでいいのかな」と迷いながら、それでも最後には、

「これが私なんだ」

と思って続けてきたように思います。

 

二つのシリーズ

comb de shioには、
「伊勢志摩シリーズ」と「ISAKOシリーズ」という
二つのアクセサリーがあります。

伊勢志摩シリーズは、小さなガラスを使った、
比較的シンプルなアクセサリーです。

小さなガラスの中に、
海や山、風景のようなものを感じることがあります。

草木染をしていた頃の、
水彩絵具で色を重ねるような感覚も、
このシリーズにはどこか残っているように思います。

一方、ISAKOシリーズでは、
線や形を使いながら、
ガラスに一枚の絵を描くような感覚で制作しています。

壁面作品を小さくして胸元へ。
小さなガラスを大きくして壁面へ。

作品とアクセサリーは、今も私の中で行ったり

来たりしています。

 

今のcomb de shio

comb de shioを始めてから、
百貨店での販売や個展など、
さまざまな場所で作品を見ていただく機会がありました。

パラミタミュージアムでは、
長い間、毎年作品展を開いていただき、
そのために壁面作品をつくることも、
私の制作の大切な時間になっていました。

けれど、コロナの頃を境に、
仕事の形は少しずつ変わっていきました。

それまでとは仕事の形が代わり、
オンラインショップやSNS、LINEなども、
自分でやっていくことになりました。

慣れないことばかりで、
うまくいかない時期もありました。

それでも、オンラインショップを少しずつ整え、
自分の言葉でお客様にお知らせをするようになり、
今の形へと変わってきました。

百貨店への出店や遠方での展示は、
搬入や展示を一人ですることが難しくなり、
今は行っていません。

以前とは仕事の形が変わりましたが、

今は、自分のできることを楽しみながら、

アトリエショップとオンラインショップを中心に、

comb de shioを続けています。

 

本を書くということ

2026年、私は一冊の本を書きました。

これまでのことを振り返ったとき、
一つの出来事が次の出来事へ、
そこで出会った人が、また次の何かへと、
不思議なくらいつながっていることに気づきました。

「どうして、こんなふうにつながってきたのだろう。」

そんな思いから、書き始めた本です。

書いているうちに、忘れていたこともたくさん思い出しました。

そして、それは私だけのことではなく、
誰の人生にも、振り返ってみれば、
いろいろなつながりがあるのかもしれないと思うようになりました。

今こうしてガラスをつくり、
comb de shioを続けていることも、
振り返れば、とても不思議なことです。

そして、ありがたいことだと思っています。

 

 

ISAKO    プロフィール

杜多一菜子 (ISAKO TODA)

1953年 三重県松阪市生まれ

神戸女子大学卒業

三重県津市在住

ガラス作家

2001年よりガラス制作を始める。

ガラスのアクセサリーと壁面作品を制作。

ISAKO / comb de shio の歩み

1999年
サラリーマンを辞め、自宅を開放してショップ「マザーグース」を始める
草木染めをしながら、染めた作品や雑貨を販売

2001年
ガラス制作を始める
Glass Craft Triennale 2001 アクセサリー部門 2作品入選
2月、アトリエユニオン大阪ショールームにて第1回装飾アート展(マザーグース名義)
作品展後、「comb de shio」と命名し、活動名を変更
ギフトショー出展をきっかけに、ISAKO作品の全国展開が始まる

2002年
雪のデザイン賞 入賞
アトリエユニオン東京ショールームにて第2回装飾アート展

2003年
三重県松阪市にショールームをオープン(〜2005年)

2004年
アトリエユニオン大阪ショールームにて第3回装飾アート展
アトリエユニオン東京ショールームにて第4回装飾アート展
Glass Craft Triennale 2004 アクセサリー部門 入選

2005年
六本木ヒルズ森タワー3F アンテナショップ出店(〜2006年)

2006年
近鉄百貨店 四日市店に「ISAKO comb de shio」出店(〜2009年)

2007年
Glass Craft Triennale 2007 絵画作品 入選
雪のデザイン賞 入賞

2008年
雪のデザイン賞入賞作品が中谷宇吉郎雪の科学館に収蔵
パラミタミュージアム 個展
六甲ヒルトップギャラリー 作品展

2009年
パラミタミュージアム 個展
comb de shio オンラインショップをオープン

2010年
Glass Craft Triennale 2010 オブジェ作品 入選
パラミタミュージアム 個展
東京 Art Gallery OPPO 個展
アトリエ併設「comb de shio アトリエショップ」をオープン

2011年〜2019年頃

パラミタミュージアムにて継続して作品展を開催

2014年〜2020年

娘がcomb de shioの仕事に加わる
その間、2019年頃まで各地の百貨店でISAKO作品を展開

主な百貨店:
阪神百貨店、阪急百貨店(大阪)
京都高島屋
ジェイアール名古屋タカシマヤ、名古屋三越
日本橋三越
横浜高島屋

2020年頃

コロナ禍を境に、百貨店や遠方での展示活動を終える
アトリエショップとオンラインショップを中心とした活動へ

2026年

これまでの歩みを振り返り、一冊の本を出版